2012年8月21日

英国の上流階級はテニスコートではなく・・・

日本チームは最高のメダル数を獲得して盛況のうちに終わったロンドンオリンピック。開催国である英国も65個ものメダルを獲得した割にはなぜあまり印象に残っていないのかと、メダル獲得競技を調べてみたところ、乗馬、ボート、セイリングなどの上流階級的な種目が目に付きました。なるほどそれで私があまり気づかなかったのか、などと思いつつ、「上流階級のスポーツ」である乗馬を眺めてみると、上流中の上流、エリザベス女王の孫であるザラ・フィリップスが乗馬で銀メダルを獲得していました。彼女は前回の北京、前々回アテネ大会でも候補に挙がりましたが、「愛馬の怪我」により、オリンピック参加はかないませんでした。彼女は名だたる乗馬一家の出身です。お母様であるエリザベス女王の娘、アン王女は1976年モントリオール大会に出場。「女王の娘」であることを理由に、英国チームでただ一人、競技前に提出が義務付けられている「性別チェック」が免除されたそうです。ザラの父であるマーク・フィリップスは1972年ミュンヘンオリンピックで金メダル、1988年ソウルでは銀メダルを獲得しています。現在は離婚していますが、アン王女とマーク・フィリップスの出会いは乗馬を通じてとのこと。日本の上流階級である天皇陛下皇后陛下は「テニスコートの恋」でしたが、英国の王女は「馬場の恋」!?

吉岡真樹

2012年8月3日

おやすみなさい・・・

ギャビタス日本事務所は明日から夏休みをいただきます。

みなさんはオリンピック観戦には熱心でいらっしゃいますか?開会式を興味深くご覧になった方も大勢いらしたのではないでしょうか。本部との交信の中ではオリンピック開催の地元の興奮はあまり伝わってきませんが、そこここでオリンピックにまつわるエピソードは生まれているようです。開会にさきがけ、ロンドン市長のボリス・ジョンソン氏は自分の声を録音して、キングスクロスの駅のSafety Announcement を放送しているというのもその一つですね。

明日からはじっくり観戦、日本の応援ができそうです。しばらくご不便をおかけいたしますが、どうぞご協力のほどをよろしくお願いいたします。ZZzzz...

山岸いつみ


2012年6月29日

この温度差?

仕事柄、多くのご両親にお会いします。当社を訪れる方々は、もちろん何等かの理由でわが子を外国の学校で教育を受けさせたい、海外で様々な体験をさせたい等と考えている方たちなので、自然に大学も海外でというか、海外ももちろん視野に入れられることをメリットに感じられているという図式になります。小・中・高校の時からの留学はある種将来の選択肢を広げることも留学の一つの目的にもなっています。ところがその大学進学でまだまだ日本の大学を主体に考える方たちがいることに驚かされます。そこまで海外で教育を受けてなぜに大学は日本なのでしょうか?

 長らく英国で教育を受け、日本でも教育を受けてみたいから大学は日本でという留学生が時々いますが、これはある意味理解できます。体験として母国でやってみたいということです。また、医学、法律のように日本での資格も取りたいと考える場合は、日本の大学も大いにありえるでしょう。但し、この考えの人たちはその後遅かれ早かれ再び海外の大学へ留学し、さらに上を目指す傾向にあります。

 私が一番疑問に思うのは、「日本の会社に入るには日本の大学卒でなければ・・」と未だに昔の事に固執する方が少なくないということです。約40年前に日本に戻ってきたような私の時代はまさにそうでした。日本の会社あるいは社会は海外で教育を受けた者に対して非常に冷く、ほぼすべての門戸が閉ざされていました。海外との接点がある企業がまだ少なかった頃のことです。日本の価値観ですべてが出来ると思えたバブル時代でもありました。しかし、今のようなボーダーレスの時代、防ぎようのない外国とのあらゆる面での接点は日頃のあふれ出ている情報からも明白です。そのために企業が外国相手の即戦力をもった社員を熱望していることもご存じでしょう。

「いやいや、いくら外国の経験があっても日本を知らないと・・」という声が聞こえそうです。では本当に留学生は日本を知らないのでしょうか?長年外国暮らしをして帰国第一日目の話をしているのではありません。日本の社会に戻ってある期間が経つと、やはりもともと日本人なのですから、そして違う価値観を経験したからこそ、知らないどころか、返って客観的な目をもって日本を深く知ることになるのです。それこそが今からの日本に必要な力だと思います。中国、韓国とアジアの諸国を見ても分かる通り、そうやって国の繁栄に貢献している、生かされている留学生の力は大きいと感じます。

渡邊和子

2012年5月22日

イギリスらしい

先ごろ、天皇皇后両陛下がエリザベス女王即位60年(ダイヤモンド・ジュビリー)のお祝に渡英されましたね。ご年齢や、今年2月に手術を受けられたことを考えても、陛下の義の厚さを感じます。さて、女王のダイヤモンド・ジュビリーのおかげでイギリスの話題が多い最近。そんな中で目立ったのは、去る14日、イギリスBBCのお天気キャスターとしてチャールズ皇太子が予告無しにテレビに登場したという報道。実際にテレビでご覧になった方もあったことでしょう。私もそれを見た瞬間「やるなー!」と企画の素晴らしさに唸っていました。少し戻って今年3月のある日、マンチェスターで挙げられていた一般人の結婚式に突然エリザベス女王が参列したというニュースもありましたね。

これらの「事件」、とてもイギリスらしいと思いませんか?王室の方がテレビに出演すること自体はイギリスでは珍しくないものの、日本的に考えると出演を実現させるまでの手配やプロセスが膨大なのではないかと思いがちですよね。そこは知りえない部分ではありますが、こういった企画もたぶん周囲の賛同を得て実現がしやすい環境である気がします。その根本にはイギリス人がジョークを重要視しているからなのでしょう。どんな堅物もジョークを言った瞬間から「あー、この人も人間なんだ」と納得してしまいます。チャールズ皇太子が突然テレビに登場し、アドリブでお茶目なジョークまで飛ばしたら、たいていの人は大いに好感を持つでしょう。私たちが留学生を送り出しているボーディング・スクールでも、校長先生や寮長先生らが生徒の前でパロディのお芝居をしたり、生徒の成績表で捻ったジョークを織り込んだコメントを書いたり、と人を楽しませることに余念がありません。また、どんなに短い会話の中でもジョークが入っていないことがありません。まるで冗談を言うことがマナーであるかのようです。(いや、それに近いです、きっと)一つのジョークを成立させようと労を惜しまないイギリス人。そのジョーク一つが相手との距離感を縮めるという大きな効果をもたらすのですから、労力の価値はあるといものです。
 
ジュビリーのお祭り騒ぎが終わると、次はロンドンオリンピックへと話題は移っていくことでしょう。その前にウィンブルドンもありますね。随所でイギリスらしいエピソードが飛び出すことを楽しみに待つことにしましょう。

山岸いつみ








2012年4月24日

郵便値上げ=チャンス!?

2012年4月30日から英国の郵便料金が値上げになります。Eメールの普及などによって経営不振のロイヤル・メールが収入を一気に増やそうというのでしょうか、1975年以降で最大の大幅値上げです。“ファースト・クラス”の切手は現在の46ペンス(約59円)から60ペンス(約78円、“セカンド・クラス”は現在の36ペンス(約46円)から50ペンス(約65円)。30%以上の値上げとなり、英国民は大ショックだと思いますが、値上げ直前の今が実は切手まとめ買いのチャンス!でも日本の感覚だと郵便料金値上げ前の切手のまとめ買いってどういうこと?って思いますよね。

 世界で初めて郵便制度を導入した英国の切手には、日本を始め、他の国々の切手とは違う特徴があります。切手に国名が入っていないというのはその特徴の一つです。世界で最初に切手を作った英国は国名を入れる必要がなかったのです。大英帝国の誇り(驕り?)が垣間見られます。英国の切手にも日本と同じように金額が書いてありますが、中には金額は書かれておらず、「1st」(ファースト・クラス)「2nd」(セカンド・クラス)とだけ表記された切手というのがあります。ファースト・クラスの切手を貼れば、「100gまでの国内定型郵便が翌営業日に通常は届けられ」ます。セカンド・クラスの切手では「100gまでの国内定型郵便が、3営業日以内を目指して配達され」ます。そしてなんと、この1stと2ndの切手は郵便料金が値上げしてもそのまま使えるのです。それだからというわけではないでしょうが、この切手はシートだけではなく、10000枚のロールでも購入可能です。切手のロールなんて日本では見たことがありません。今1stの10000枚ロールを4600ポンドで購入しておけば、4月30日以降に購入する場合に比べて1400ポンドもお得となります。そんなわけで「切手をお得にまとめ買い」のチャンス、ということになるのです。ちょっと不思議な感覚ですね。


吉岡真樹

2012年3月23日

卒業シーズン

天気は冬なのか春なのか微妙な日々が続いていますが、日本は卒業シーズンですね。留学生のご兄弟で卒業したみなさま、ご卒業おめでとうございます。ご存知の方も多いと思いますが、イギリスの学年末は、6月。約2ヶ月という長い夏休みの直前にお祝いです。今回は、個人的な話になってはしまいますが、私の経験した卒業式の話などしてみたいと思います。 

私は小学5年生の終わりで留学を始めたため、日本の卒業式も、修学旅行も経験しませんでしたが、日本の友人から聞く「卒業式」はひどく感動的なもので、みんなで泣いたり、"憧れの先輩"としてボタンが欲しいとリクエストされたり、とにかくも、ドラマや映画のシーンが決して大袈裟ではない、本当に「別れ」を象徴する一大イベントなのだと認識していました。私は語学学校の研修後、シニアスクールの一年生として入学したので、18歳の卒業式が、実に幼稚園の卒業式ぶりとなりました。皆が辛かったGCSE, 重なるエッセイの締め切りに泣いたA-level, 友人と一緒に給食のヨーグルトを学食から持ち出し、バスルームの順番待ちで喧嘩をし…寝ても起きても一緒に過ごしてきた仲間達との別れ、日本から母親も駆けつけてくれ、お世話になったガーディアンさんもご出席下さり、いや私なんかの卒業式でも感慨深いものがあるじゃないか…と式典に出たわけです。

ところが。

誰も泣かない。もちろん、私も泣かない。会場がそういう「感動的」な空気じゃないんですね…。あっさりと式典は終わり、寮から溢れる荷物を運び出している間に、クラスメイトに呼び止められては、今までの学期末と変わらず、「良い夏を!」とハグされ、「じゃ、またね!!」と皆、自分の家の車に乗りこんでいく。ロンドンの美大に進学予定だから、いつでも会えると思っていたのか…卒業前日に恒例の、校内に仕掛けるイタズラを完遂し満切ってしまっていたのか…。当日、感慨深く別れの握手とハグをして下さったのは、懇意にして下さった教師の方々のみ…。皆、私との別れより、初めて会う私の母との挨拶に盛り上がり、その様子に母も多少、拍子抜けだったようでした。 

いつかどこかで会える!会おうと思ったらどこでもいつでもどうにか会える!というイギリスのモットーなのか。ジメジメしたのは趣味じゃないのか。いやでもあれはカラ元気とかじゃない。普通の、またね、だった!自分も車に乗りながら、一応校舎を振り返り…私のボーディング生活は幕を閉じました。 

ギャビタス卒業生には、このブログを読んで、いやいや、私は号泣でした!僕は感動しました!と思う意見もあるでしょう。私もたまたま私の学校が、私の学年がドライだったのだ、と思いたいところです。 

とにかくも、私が体験した卒業式は、日本の卒業式から想像していた重々しく美しき別れではなく、お疲れ!夏(休み)を楽しんで、また頑張ろうね!と、次のステップを意識した挨拶であり、大学どこに行ってしまうの、イギリスからいなくなっちゃうの、という寂しさより、絶対また会おう!という無責任なまでの明るいものでした。でも、私はこのイギリスらしい、カラッとした卒業式を物足りなく思うこともなく、今となってみれば、これがイギリスの(学校)生活にすっかり順応した表れだったのかもしれません。 

…とは言えど、大切な留学生活の節目、今年の卒業生達にとって、後悔のない、充実感のある卒業式になることを今から願っています。

鈴木元子

2012年2月13日

秋入学に思う

日本に生まれ、日本の教育制度の中で育つと教育制度が国によって大きく違うという感覚を持つという機会はまずないといえます。もしかしたら、「違う」ということがあり得るという発想にもいたらないでしょう。どこの国にも日本のように小学校が6年間、中学高校は3年間ずつ・・ではない?! 私どもから英国の制度の説明を受けて、びっくりする方がまだまだたくさんいらっしゃいます。「何しろ、まったく違う制度ですから、日本の制度とは比べないでください。」と前置きしてから約1時間。説明が終わったところで、「・・・ということは、日本の何年生ですか?」と聞かれ、がっくりすることが多々あります。(笑)

日本の基準=世界の基準ではないと理論的には分かっていても我々に長年の間でしみついた「常識」を取り去るのがいかに難しいかです。ガラパゴス化というのでしょうか、結構日本独自の基準って多いのですよね。国内だけの問題であれば、あえて他国と同じにする必要もない。「桜が咲いたら一年生」ではなくなってしまったら、とても寂しく感じます。枯葉とともに新学年が始まるなんてピンとこないですもの!しかし、ここまで国を越えて人々が行き来し、暮らし、教育をうけるというボーダーレスの時代になってしまうと、世界共通という利便性が先に立ってしまうのはいたしかたないのかもしれません。英語がその良い例です。多少不便でもいいと言えるだけの国力?があれば違うのでしょうか?

でも、「秋入学」にしたら、海外からどんどん学生が日本にくるのでしょうか?今の日本の学生が海外で勉強をしようと思うのでしょうか?そんな簡単なことではないと思います。制度が違っても魅力のある内容の大学だったら、是非日本で学びたいと思うでしょうし、海外で勉強をしたり、世界を相手に戦ってみようという意欲があれば、日本の学生もどんどん留学をするでしょう。日本は「形」を作るのは上手。しかし、外国にないものや外国に負けないものを沢山もっているのですから、是非とも「内容」で海外からの学生を引き付けることを、制度の改正と同時に熟慮してもらいたいと思います。東大さん、頑張って!

渡邊和子